大阪高等裁判所 昭和27年(う)1490号 判決
(一)本件のような逋脱事犯については、告発は通告に基ずくべく、また公訴は告発に基くべきものであること勿論であるが、右公訴にかかる事実は通告及び告発にかかる事実との間に同一性があればよいのであつて、この同一性がある限り右三者の間に逋脱数量又は逋脱税額について相違があつても、それがために公訴の不適法を来すものではない。所論の相違は同一事実の範囲内における数量、税額の相違に止まるから、これを以て本件公訴を違法ということはできない。
(二)製造場より移出した物品を同一製造場内に戻入した場合については、物品税法第九条は命令の定めるところにより戻入した月分以降の物品税額から戻入した物品に課せられた物品税に相当する金額を控除する旨規定するに止まり、戻入品に対する物品税を当初に遡つて免除するものでないことは、同条の立言及び物品税の納期に関する同法第一〇条によつてこれをうかがうに難くないところ、所論の戻入は昭和二三年一一月三日から同二四年三月一日までの間になされたものであることは証第五号の返品明細書によつて明らかであり、またこれに対する戻入品の届出手続(物品税法施行規則第一八条参照)も本件犯則事実が発覚した後に至つてはじめてなされたものであることは原審挙示の証拠である被告人の検事に対する供述調書(記録第一二〇丁)及び当審公判における自認によつて明白であつて、本件物品税の各納期までには未だ戻入品に対する控除を受け得べき条件をそなえていなかつたものといわねばならない。されば、原審が戻入品に対する税金相当額を控除しないで逋脱金額を認定したとしても、これを以て違法とすることはできない。
同第二点について。
(一)被告人がたとえ同業者を以て組織する日本優良化粧品工業協会の認定する金額によつて申告すれば脱税とならないものと確信していたとしても、それは単に法の不知にすぎず犯意の阻却するに足らないのみならず、原判決挙示の証拠によれば被告人が物品税逋脱の意図を以て裏帳簿には真実の移出数量を記載しながら故意にこれより著しく少いように仕なして申告したものであることを認めるに十分であつて、所論を斟酌しながら記録を精査しても被告人に脱税の認識がなかつたと認めることはできない。
(中略)
弁護人Bの控訴趣意第一点について。
所論はまず昭和二六年六月一五日附を以てなされた税務署長の告発に基ずく本件公訴は違法であると主張する。なるほど右日付を以てなされた告発は昭和二四年一月一七日附通告処分より二年以上後であることは所論の通りである。けれども、国税犯則取締法第一七条が犯則者において通告を受けた日より七日(のち昭和二五年三月三一日法律第七七号によつて二〇日と改められた)以内にこれを履行しないときは告発をする旨規定しているのは、むしろ犯則者に対する猶予の趣旨にすぎないのであつて、これを以て右期間経過後直ちになされなかつた告発を所論のように不適法とする根拠とすることはできない。
なお、間接国税犯則事件については、検察官は告発を待たずしては公訴を提起することができず、告発を欠く起訴は適法有効ということはできない。この意味において告発は訴訟条件であると解すべきである。しかしながら、一旦告発があつても、それに基ずく訴訟が現に裁判所に係属中または有罪判決確定後に重ねて告発がなされたという場合は格別として後に述べるように、一旦告発があつたところ、それに基ずく公訴が適法になされたことを認むべき証明がないとの理由による公訴棄却の判決が確定したので、さらに告発をした本件のごときにあつては、告発手続が二度重ねられたというだけの理由では、告発を訴訟条件とする法律の趣旨に反するものとは解しがたいから所論のようにこの理由をもつて本件公訴を違法であるとすることができない。
(後略)